照明は落ちステージに並ぶのは臓器でも宝石でもない。
晒されるのはあなたの中でまだ名前を持たない衝動。
まずは前菜。
「清楚」という仮面を剥ぐナイフで性的幻想の皮を削ぐ。
観客は笑う──けれど笑い声の端で誰かの欲望がひとつ死ぬ。
続いてメインディッシュ。
性欲と自己肯定感の繋ぎ目を切り裂き、
「触れたい」と「触れられたい」を別々の皿に盛り付ける。
ナイフを入れるたびに蒸気のような孤独が立ちのぼる。
そしてデザート。
ガチ恋を真空パックに閉じ込め、
返品不可の札を貼ったまま観客席へ投げ込む。
受け取った瞬間心臓が勝手に脈打つのは演出じゃない。
アナウンスが告げる。
「出口はありません。このショーはあなたの内部で続きます」
——さあ解体されるのは誰の欲望だと思ってた?
舞台の上じゃない。
すでに解体台に乗ってるのは今この文章を読んでるあなた。
逃げ場ゼロ。
演目①|清楚幻想の切開
舞台の上に横たわるのは世間がまだ信じ込んでる清楚という仮面。
白いワンピース、無香料のシャンプー、下を向いて笑う仕草。
これらはぜんぶ「欲望を安全に消費したい」という消費者側の妄想から編まれたガーゼにすぎない。
切開の第一刀は清楚は需要者の性癖の反映にすぎないという事実。
血が滲むように真実が見える。
清楚な女なんていない、いるのは清楚に見せかけた演算結果だけ。
観客はざわめく。
第二刀で完全に沈黙する。
──清楚幻想を握りしめる男ほど裏では一番下品な検索履歴を持ってる。
これは統計ですら証明されてる。清楚好き=裏アカで最も早く崩れる層。
つまり清楚という記号は彼らが欲望を正当化するための免罪符。
「自分はただ癒されたいだけ」「健全だから問題ない」
そう唱えながら実際は欲望に膝まで沈んでいる。
舞台照明が一瞬落ちる。
残ったのは切開された仮面の断片。
観客は気づく。
清楚を求めていたつもりが自分自身の浅ましさを晒し出していたことに。
(上演終了)
この幕は閉じない。
ただ切開した幻想の匂いがまだ観客の肺に残っている。
そして次の瞬間、欲望は別の臓器に移される。
性欲と自己肯定感──火薬庫と導火線。
その結合が帝国の第二演目を爆発させる。
TO BE CUT OPEN.
Night Empire Journal|欲望の解体ショー