推しのグッズを買わないと罪悪感があるのはなぜ?好きと購入のあいだ
買わなかった商品に言い訳を考えている。
今月は出費が重なった。置く場所がない。今回のデザインはそこまで好みではなかった。誰に聞かれたわけでもないのに商品ページを閉じた理由を頭の中で説明する。
推しは好き。そのグッズは欲しくない。この二つが同時に成り立っているだけなのに、買い物を見送ったつもりが応援を一回休んだような気分になる。
グッズを買わずに曲を聴く。ライブを楽しむ。作品の続きを待つ。そうした関わり方でもファンでいられる。それでも罪悪感が残るなら、欲しい物を考える時間にファンとしての自分への採点が入り込んでいるのかもしれない。
グッズを買わないだけで説明が必要になる理由
好きなパン屋に立ち寄っていつものパンを買う。新作が並んでいてもその日は買わずに帰る。店を好きなことと全商品を買うことは別々に扱える。
推しのグッズではこの距離が急に近くなることがある。
アクリルスタンドの形やサイズについて考えていたはずが、途中から活動を支えるべきか、自分は十分に応援しているかという話になる。商品への評価に人への気持ちが入り込み、欲しくないと言うにも気を使う。
買わない理由を説明しているうちに好きな理由まで弁明してしまう。
商品の値段だけなら財布と相談できる。そこに自分の誠実さまで載せると予算を守った後にも後ろめたさが残る。買うかどうかを決めたいだけなのに、自分がどんなファンなのかまで問われた気分になる。
SNSではグッズを買った人の好きが見えやすい
曲を何度も聴いたこと。帰り道に歌詞を思い出したこと。少し前のインタビューを読んでその人への見方が変わったこと。こうした時間は外から数えにくい。
一方で届いた箱や並べたグッズは写真になる。購入報告は投稿として残り、数も種類も見える。タイムラインでは好きという感情のうち商品になった部分が目立ちやすくなる。
買った人が楽しさを共有することは自然な行動。それを眺める側が投稿された購入量をファン全体の標準として受け取ると、自分だけ応援が足りていないように感じることがある。
買わなかった人は買わなかった箱の写真を投稿できない。
その日のタイムラインが購入報告で埋まっていても、何も買わずに曲を聴いていた人の時間はそこに写っていない。目に入るのは購入報告をした人の行動であり、ファン全員の買い物ではない。
推し活が義務になると在庫まで気になる
商品が売れることは制作や活動を支える。その現実を知っているからこそ購入を見送るのが難しくなる人もいる。
ただし活動に費用がかかるという事実から、一人のファンが発売のたびに購入すべきという結論までは距離がある。
売上を気にするようになると商品ページに残った在庫まで自分への呼びかけに見えてくる。欲しいから買うことに加えて、売り切れていないのが気になるから買うことも増えていく。
その購入でいったん安心できても次の発売で同じ不安が戻ってくるなら、予算だけでなく買い物を決める基準も見直したい。商品を楽しむための支払いに売上を心配する役目まで含まれ始めている。
価格や数量や発売頻度を決めることも商品の魅力を考えることも販売する側の仕事。その結果までファンが財布で引き受け始めると、推し活の楽しみと運営の責任が一人の中で重なってしまう。
グッズを買うか迷ったときに考えたいこと
購入報告をしなくても欲しいか
迷ったときは購入報告をしない前提でそのグッズが自分の部屋にある場面を想像してみる。誰にも見せなくても飾りたいか。使いたいか。箱を開けたときにうれしいか。
それでも欲しくなるなら手元に置く楽しさがある。買ったと知らせられない途端に魅力が薄くなるなら、商品と一緒に周囲へ参加を伝える機会を求めているのかもしれない。
仲間と同じ物を持つ楽しさにも価値はある。自分が何にお金を払いたいのか分かると購入後の納得も変わる。
発売前に使える予算を決めておく
予算を発売のたびに作り直すと、その商品を買える金額まで引き上げたくなる。先に使える金額を決めておけば今回は何を楽しむかという具体的な話に戻れる。
グッズよりライブに使いたい月もあれば交通費のために残したい月もある。生活に必要な支払いを確保したうえで使い道を考える。見送った商品を次の購入で埋め合わせる義務もない。
買わない代わりのノルマを作らない
グッズを買わない代わりに毎日投稿する。必ず拡散する。再生回数を増やす。そんなふうに別の義務を追加すると、支払いをやめた後まで勤勉さで好きの証明を続けることになる。
感想を書きたい日は書く。人に聴かせたい曲があれば紹介する。楽しみから生まれる行動まで購入を見送った埋め合わせに変えてしまうと、休むたびに未払いの仕事が増えるような感覚になる。
買わない回があっても戻ってこられる売り方
Night Empireがここで考えたいのはファンの節約術だけではない。商品を一つ見送った人が次も気持ちよく戻ってこられる売り方について。
購入量で熱量を順位づける言葉や完売しない不安をファンに背負わせる告知は、その場の購入を促すかもしれない。その一方で発売のお知らせを開くこと自体が負担になる人もいるだろう。
欲しい商品が出たときに買える。今回は見送っても作品を楽しめる。久しぶりに買ったときも間が空いた理由を説明しなくていい。そうした関係を保てるかどうかは継続して商品を届ける側にも関わる。
商品ページを閉じた後に曲を再生する。その再生にはさっき買わなかった理由を添えなくていい。
