カラオケ店が月額で売り始めた「歌わない3時間」
歌う場所の料金表に、歌わない人のための時間が加わった。個室は、いつからコンテンツを消費するための都市設備になったのか。
カラオケ店へ行く理由は、歌いたいから。そう説明してきた業界が、歌わずに過ごす客へ月額料金を提示した。
2026年10月1日、カラオケまねきねこは「うたホ」を全国約700店舗へ拡大した。開始記念価格は月額9,800円(税別)。会員本人と同伴者1人が、1日1回、最大3時間まで対象の部屋を使える。室料とドリンクバーがプランに含まれる。延長や対象外店舗などには条件がある。コシダカの発表
公式のサービス紹介は、楽器の練習、ゲーム、動画視聴、会話を用途に挙げる。販促素材は実際の利用構成を証明しない。それでも、事業者が誰に売ろうとしているかは分かる。
同じ日に、受付まで消した
同社は10月1日に「まねきGO」も開始。アプリで予約し、受付を通らず入室し、退室時の決済までスマートフォンで済ませる。対象は全国729店舗(一部店舗を除く)。公式発表
定額制は来店を「その都度の支払い」から「既に払った会費を使う行動」へ変える。入退室の省力化は、頻繁に来るほど面倒になる受付を短縮する。会員が毎日使うという実績は未確認だが、利用回数が増えても手続きの負担を増やしにくい設計だ。
部屋で起こることも、店が用意する
10月6日、渋谷本店ではVTuber・IRySのライブを大部屋で上映した。配信チケットに加え、店舗の参加料金2,500円(税込)が必要だった。公式発表
映像を見る権利を持つ人が、ほかのファンと観る場所にもお金を払う。配信映像は同じでも、部屋の中にいる人間が違う。店が追加で売るのは、その差だ。
JOYSOUNDの「みるハコ」も長渕剛の公演をカラオケルームへ生配信すると発表した。視聴券は1人1,100円(税込)、室料は別。エクシングの発表
部屋の収益源を数え直す
従来の分かりやすい売上は室料と飲食だった。新しい入口には月額会費、上映・イベントの追加料金、映像コンテンツがある。すべてが同じ店舗で利用できるわけではなく、契約や配信権利にも制約がある。
防音、画面、音響、飲食、個室という設備は変わらない。そこでゲームをする。配信を見る。楽器を練習する。誰かと同じ映像を観る。設備の使い道が増える。
ただし月額制には難所もある。混む時間帯に定額会員が集中すれば、通常料金の客の席を埋める可能性がある。会員数の拡大がそのまま利益になるとは限らない。
これは業界の転換か
観測:全国規模の定額プランとスマホ入退室が始まり、複数社が映像コンテンツを個室で扱っている。
弱いシグナル:企業が歌わない用途を販促し、映像の視聴権と一緒に観る場所の料金を分けている。利用実績の拡大は未確認だ。
仮説:カラオケ店は歌唱中心の時間貸しから、個室の利用権とその中で消費するコンテンツを組み合わせる事業へ、一部を移していくのではないか。
7日後:定額会員向け予約条件の変化。30日後:非歌唱イベントの店舗展開と料金。90日後:会員数、稼働率、客単価、利用目的の実績や他チェーンの追随を確認する。
会員数が伸びず、非歌唱用途が単発企画にとどまり、定額プランが縮小するなら、この仮説は修正する。
歌われた曲数だけでは、カラオケ店で何が売れているかを説明できなくなり始めている。
